小学生。少年は少年に助けられた。

 中学生。少年は青年に助けられた。少年はその事実を知らない。

 高校生。少年は青年のことを、よく知らない。

 大学生。少年は青年のことを知る。少年は青年を――助けたい。








 シンプルにオーブンで焼いただけのトーストと、簡単な目玉焼きとハムにサラダ。福沢時計店でレギュラー化されている最も安価な朝食メニューだ。

 刻間夫婦は毎日の食事を外食で済ませるなんてことはしないが、その日は例外で、時環は一人で朝食をとらなくてはならなかった。限られた日にしか開店されない、非常に人気な隣町のパン屋に夫婦は揃って朝早くから向かったのだ。種類によっては一人一個までしか買えず、時環にも付いてきて欲しいというのが二人の本音であったが、学校がある以上それは出来ない。

 パンの戦場に向かった二人の話を聞いた幸哉は、自分も行きたかったと心の中で羨んだ。


「ごちそうさまでした。お勘定お願い!」


 冷水まで残さず飲み終えた時環は少しばかり焦った様子を見せた。余裕をもって家を出たつもりでも、想像と現実はいつだって簡単に反比例する。