「ウチ、嫁さんが卵アレルギーで、食べられないものをみたくないからって買ってきたら怒るんだよ。だから食いたいときは、見つかる前に一回で使い切れる二個入りのしか買わねーんだ。八個入りは必要ないから、ユキ君が使いな」
「でもクーポンは……」
「いいっていいって! 何だかんだ置いてたって、行くの忘れて結局使わず仕舞い。財布の中に眠る運命だ。ユキ君が引き換えついでに消費してくれる方がよっぽど合理的だよ」
「ありがとうございます! うっわ、嬉し……! 最近の卵って値上げしてるのが多くて、新メニューの開発みたいな趣味の分にまで使う余裕がなかったんですよ。プチフールとか作りたいっ、あと軽食用にアニョロッティとか! お腹は空いてないけど何か少しご飯系を口にしたい人に丁度良さそうな気がして……!」
「本当ユキ君はお菓子作りとか料理とか好きだよな。普段料理をしない俺にはアニョロッティが何なのかも分からんよ。ひょっとして時計よりも好きだったりして」
「いえ。料理も好きですが、一番はやっぱり時計です。そこは父親譲りですね。でも、店を継ぐ前に少し社会にも出てみたいので栄養関係の仕事に就けたらとは考えています。理想としては家庭家教師かな……ちなみにアニョロッティはローストした色んな肉を小さなパスタ生地に詰めた詰め物パスタですよ」