「やあ、真名ちゃん。出番がやっと来てくれてうれしいよ」と律樹が真名に片方の目をつぶる。
先日、占星術部の部室で行ったように、泰明が遠隔で自らの式神である律樹を招来したのと同じ原理だ。ただし、あのときは律樹を霊体として呼び出して留美の身体に入れたのだが、今回は律樹を招来して肉体化させているのが違っている。
「き、きみはどこから入った!? ここは女子大だぞ、不審者めッ」と、大下が叫んだ。
律樹はまったく意に介さず、慇懃に頭を下げた。
「初めまして、悪党の大下教授どの」
「何だとッ!? 朝倉くん、警備員を呼ぶんだッ」
「そんなにぎゃーぎゃー騒ぐと血圧上がりますよー。あ、あと、僕はただの露払いだからすぐいなくなるよ?」
そう言って律樹は大きな音を立てて両手を合掌の形にする。
『律樹、いけるか』
「いつでもどうぞ」
スマホ越しに、主と式神が声を合わせた。
――おん・かかか・びさんまえい・そわか。
仏の慈悲の体現者・地蔵菩薩の真言だ。
真言を唱え終わると同時に、律樹の身体が眩しい光を放つ。先ほどの霊符と同じような現象だった。大下と朝倉が呻く。
今度も光は一瞬で消えた。
光がなくなって、律樹も消えている。
正しくは律樹が消え、別の人物が立っていた。
その人物とは――髪が長く、メガネをかけたやさしげな顔つきの女性。
彼女を見て、朝倉が驚きに目を見開いた。
「そんな……」と呟きながら、彼女に手を伸ばし、名を呼ぶ。
「浩子――!」
先日、占星術部の部室で行ったように、泰明が遠隔で自らの式神である律樹を招来したのと同じ原理だ。ただし、あのときは律樹を霊体として呼び出して留美の身体に入れたのだが、今回は律樹を招来して肉体化させているのが違っている。
「き、きみはどこから入った!? ここは女子大だぞ、不審者めッ」と、大下が叫んだ。
律樹はまったく意に介さず、慇懃に頭を下げた。
「初めまして、悪党の大下教授どの」
「何だとッ!? 朝倉くん、警備員を呼ぶんだッ」
「そんなにぎゃーぎゃー騒ぐと血圧上がりますよー。あ、あと、僕はただの露払いだからすぐいなくなるよ?」
そう言って律樹は大きな音を立てて両手を合掌の形にする。
『律樹、いけるか』
「いつでもどうぞ」
スマホ越しに、主と式神が声を合わせた。
――おん・かかか・びさんまえい・そわか。
仏の慈悲の体現者・地蔵菩薩の真言だ。
真言を唱え終わると同時に、律樹の身体が眩しい光を放つ。先ほどの霊符と同じような現象だった。大下と朝倉が呻く。
今度も光は一瞬で消えた。
光がなくなって、律樹も消えている。
正しくは律樹が消え、別の人物が立っていた。
その人物とは――髪が長く、メガネをかけたやさしげな顔つきの女性。
彼女を見て、朝倉が驚きに目を見開いた。
「そんな……」と呟きながら、彼女に手を伸ばし、名を呼ぶ。
「浩子――!」