相変わらずドS陰陽師で、かえってほっとする。真名はスマホをタップして写真を画面に出した。慌てて撮った写真だったが、この記事の範囲は写っていた。

 少し読みにくいが、目をこらして記事に目を通す。

〝栗原浩子〟以外に出てきている人名が一人だけいた。彼女の恋人であり、自殺の原因になったのではないかという〝A〟という人物だった。単純な仮名表記かと思ったが、真名の見鬼の才がまたしても不意に繫がったのだ。

「これ、〝朝倉〟助教のことだ――」

 年齢的にも当時の朝倉なら自殺した浩子と付き合っていてもおかしくない。真名は改めて「月刊陰陽師」編集部に電話した。

『もしもし。神代か?』

 今度はいきなり泰明が出た。

「はい、神代です。よく私だって分かりましたね」

『そっちからの番号が通知されているからな。で、どうだった?』

 真名は先ほどの記事の内容と、自分が霊能力で見て取った内容を泰明に伝えた。

「これが何かヒントになるのでしょうか」
と、真名が尋ねると泰明が小さく舌打ちする。

『当たり前だろ。陰陽師というものは森羅万象万物の現象――それこそ烏が激しく鳴いたとか――から天意を読み解く存在だぞ。これまでその浩子先生を普通に受け入れていた神代が、ひょっとしたら自殺している人間かもしれないと思うなどという重大な変化のときに一緒に見つかることが、ただの偶然なわけあるか』

 なるほど、と頷いたものの、真名は質問した。

「具体的にはどうすればいいのでしょうか」

『簡単なことだろ。明日、その朝倉って助教に話してみればいいんだよ』

「話す?」

 真名が聞き返すと、泰明が当然以前という感じで言う。

『〝栗原浩子という女性の霊が私に何度も接触してくるけど、心当たりはあるか〟って言えばいいんだよ』

「えー……」思い切り引かれるのではないだろうか。

『神代の見鬼の才の通りにその助教が関係しているなら、何か反応があるだろう。あとは相手の出方次第だ』

「はあ……」

 ほとんどため息のような返事をした真名に、泰明がダメ押しのような一言を付け加え、真名は目眩を覚えた。

『あと編集長が、それ記事にしてくれって』