そういうわけで、真名は授業の休み時間などを使って校正記号の本を何度も目を通していた。
 無機質な記号ばかり見ていると訳が分からなくなってくる。
 だからといって、雑誌の性質上、見本をこっそり持ち出して勉強できないから仕方のないことだった。

 二限目を自主的に休講にする。
 出席日数は大丈夫だなはずだった。それよりもいまは泰明の役に立ちたいし、入校日に向けてみんなの足を引っ張ることもしたくない。
 構内のカフェで紅茶を飲みながら校正記号を眺めたり、「実践・初めての取材」みたいな本をぱらぱらやっていると、LINEが通知を告げた。
 留美だった。
 昼食を一緒にしないかと書いてある。
 このタイミングでLINEが来るなら、留美も二限が休みだったのだろう。カフェにいると返すと、すぐに既読がついた。

「こんにちは、真名さん」
 と、返信の代わりに留美のやさしげな声がした。

「こんにちは。早かったですね」

「近くにいたので。――お勉強中でしたか?」

「ううん。例の雑誌編集のアルバイトのだから、大学の勉強じゃないですよ」

 留美の話では、占星術部の方はあっさりと辞められたらしい。他の、名前だけ在籍していたクラスメイトも一緒に辞めたそうだから、このままなら廃部になるだろう。サークルを辞めるときに一応、顧問の寺沢に知らせに行ったが、寺沢は妙に疲れていたそうだった。教授にこき使われているのだろうと留美は同情している。

 留美も真名も、顧問の寺沢の〝不調〟の本当の理由が泰明たちの調伏によるとはつゆほども気づいていなかった。

 荷物をまとめた真名が伸びをして立ち上がる。

「ごはん行きましょうか」

 すると留美が笑った。

「ふふ。真名さん、面白い」

「え? そうですか」

「だって、お昼ごはんがすごく楽しみみたいな感じで」

 真名はちょっと顔が熱くなる。

「あ……そんなにお腹がすいていたってわけじゃないんだけど、あんまり友達がいないから誰かと一緒にごはんが食べるのがちょっとうれしくって」

「何言ってるんですか、そんなにきれいなのに。私こそ、一緒できてうれしいです」と留美が苦笑いした。真名も照れたように笑うしかない。陰陽師の家に生まれた特殊性を離しても始まらないからだった。