カラオケ店の前で解散したあと、私は家路に向かってひとりで歩いていた。

これから何食わぬ顔で家に帰って、公園で食べたお弁当をお母さんに渡して、友達がSNSにアップしてる今日の写真にいいねを押す。

そこに感情がなくても、できてしまう行動ばかりを繰り返してる気がする。

意味のない毎日。そしてまた明日も同じ毎日。

頬に暖かいものが当たっている気がして顔を上げると、私はいつもの歩道橋の上にいた。

友達はいるし家族もいる。なのに、そこには自分の居場所がないような気持ちになる。

寂しい苦しいをなん往復したって、私はまた寂しいに行き着く。

とてつもない空虚感に襲われる中で、旭から電話がかかってきた。私はふう、と深呼吸して、スマホに耳を当てた。

「はい」

『よう、今なにしてる?』

「学校帰りだよ」

まさか学校には行かずにカラオケ帰りだなんて、話せるわけがない。

『そっか。俺も』

雑音が多い私の周りとは違い、彼の電話からは車の音も人の声もしていない。

『昨日、送った写真見た?』

「赤い夕日?」

『うん。そう。あれ見てさ、なんか暗室のこと思い出したよ。まだ中学に残ってんのかな』

私が卒業するまで写真部という形は残っていたけれど、あのまま新入部員が来ない状況が続けば、廃部になっていても不思議じゃない。