「きみはなにちゃんですか?」

蜂の巣のようにピアスが開いている隣の男子に声をかけられた。

「……市川です」

「じゃなくて、下の名前。さっき呼ばれてたよね? えっと、ひ、ひ……」

「響」

「そうそう、響ちゃん! よろしくね」

テーブルに置かれた人数分の飲み物を手に乾杯をさせられた。……どうしよう。こういうの慣れてないっていうか苦手すぎる。

私の気持ちを置いてけぼりにしたまま、部屋では流行りの曲が次々と入れられていった。私はいいと言ったのに強制的にマイクを持たされて、男子に肩を組まれた。

……気持ち悪い。なんとも思ってない人から触られるってこういう感じなんだ。

それに比べて同じ男の子でも旭に対しては一度も嫌悪感なんて湧かなかった。

むしろ一度知ってしまった感触や温もりが頭から離れなくて、彼の手ばかり見てしまった時期もある。

ということは、やっぱり私は旭に特別な感情を持っていたということだ。

十七歳の旭の手は、どんな感じなのかな。その手で近くにいる女の子に触れたりしてるんだろうか。

「ねえ、最後にみんなで写真撮ろうよ」

馴染むことができずに二時間が経った頃、友達の提案で記念写真を撮ることになった。自撮り棒を使い、画面に収まるようにみんなで肩を寄せ合う。

「はい、じゃあ、いくよー!」

合図とともにスマホのシャッターが切られた。

すぐに共有された写真を見てぎょっとした。自分の顔が怖いくらいに引きつっている。ちゃんと笑顔を作ったつもりだったのに、全然笑えてない。