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……はあ、と重たいため息をつくと、足元に集まっていた鳩が一斉に飛び立った。
『きっと旭くんは優しいからひとりだった市川さんのことを放っておけなかったんだろうね』
あの言葉が頭から離れなくて、私は降りるはずだった駅を通りすぎて、見知らぬ公園へとたどり着いていた。
……学校、サボっちゃった。
カバンを開けると中にはお母さんが作ってくれたお弁当が入っている。せっかく作ってもらったのにズル休みするとか最悪すぎる。
罪悪感に苛まれながらも、残すわけにもいかないとベンチに腰かけてお弁当を広げた。
私の好きなものばかりが入っているおかずをひとつ、またひとつと口に運んでいく。
あの頃、たしかに旭は私に優しくしてくれた。
私も優しくしたいと思うくらいに。
でもその胸のうちでなにを思っていたのかはわからないし、考えてみれば私は彼のことをなにも知らないんじゃないかと思う。
旭が引っ越した理由はお母さんの仕事関係とか、持病である喘息とか、いくつか聞いている。嘘をつく必要がないからどれも真実だったと思う。けれど、まだ他にも理由があった気がしている。