私はきみがカメラを向けたいと思う綺麗なものになりたい。

そんなことができたら、幸せだろう。

幸せすぎて、きっと泣いてしまうと思う。


「あ、おはよう。響」

目が覚めてリビングへと向かうと、元気のいいお母さんの声が飛んできた。テーブルにはすでに朝食の準備がされていて、しばらく使っていなかったミキサーを使いスムージーまで作ってあった。

「う、うん。おはよう。どうしたの?」

どんなに忙しくても朝ごはんは用意してくれるけれど、こんなにご機嫌なのは滅多にない。

「ずっと煮詰まってた仕事が一段落したのよ。って言ってもまた次のことをやらなきゃいけないんだけどね」

そう言って、お母さんにお弁当を手渡された。最近は負担にならないように私が作っていたから、お母さんの手作り弁当は久しぶりだった。

「いつも響に無理なことばかりさせてごめんね。今日は響の好きなものをいっぱい詰めておいたから」

「ありがとう……」

お母さんだって私のことを考えていないわけじゃない。

こうして時間に余裕ができれば、ちゃんと気にかけてくれるんだって思ったら泣きそうになった。

と、その時。リビングと繋がっている隣の部屋から未央が起きてきた。

「あ、ねーねがいる! あのね、このクマたんとパジャマ可愛いでしょ?」

妹は見たことがないパジャマを着ていた。その腕にはお世話ができるクマのぬいぐるみを抱いている。

「ふふ、未央ったら、ずっと響に見せるんだって楽しみにしてたのよ」

昨日未央のことを寝かしつけたのはお母さんなので、私はさっさと自分の部屋にこもっていた。

「このぬいぐるみは、お父さんが買って送ってくれたの」

側にあった箱にはデラックスと書かれていて、着替えや哺乳瓶がセットになっているようだ。この手のおもちゃはそこそこに値段が張ることを知っている。