「あ、猫しゃん!」

すると、突然未央が一目散に走り出した。

「え、ちょっと……!」

その小さな後ろ姿を慌てて追いかける。どこにそんな持久力があるのか、妹の小走りに付いていくのがやっとだった。

未央の視線の先には茶トラ猫がいて、そのまま慣れたように石段を駆けていく。

あれ、ここって……。

懐かしい気持ちになりながら、私も石段を上り始める。その途中で疲れたという未央を抱っこしつつ、ようやく上までたどり着くと、そこは旭と訪れたこともある神社が広がっていた。

そういえばあの時も同じように猫を追いかけてここに来たんだっけ。

境内の雰囲気は二年前となにも変わっていない。

十四歳の頃、私はたびたびこの神社を訪れていた。あの時は彼にただのさんぽで立ち寄ってただけだと言った気がするけれど、本当は違う。

お母さんが再婚して見知らぬ人がお父さんになって。ふたりが仲睦まじくしてる様子を見ていいのか悪いのか戸惑って、なんとなく家に居づらい時にはひとりでここにきては膝を抱えて座っていた。

少しずつ慣れていけばいい。少しずつお父さんのことも受け入れていけたらと前向きに考えていたこともあったけれど、気持ちの整理がつかないうちに妹ができてしまった。

べつに誰のせいでもない。ただ私に柔軟に対応できる力がなかっただけだ。