なにが起きたのって顔でクラスメイトから見られている。

本当になにが私の中で起きているんだろうか。

今までこんなふうに目立つことなんてしてこなかったし、心では私には関係ないって考えていたのに……。

どうしても三浦に対しては、無関心ではいられない自分がいた。

「え、い、市川さんが?」

場違いともいえる私の発言に、みんながぽかんとしている。間違いなくモブキャラの私に誰も期待なんてしてないし、お呼びでないって感じの空気が痛いほど伝わってきていた。


「なんで急に市川さんが立候補してくるの?」

「ね、意外っていうか、ちょっとびっくりだよね」

ざわざわとしてる中で、失笑してる人もいた。でも不思議と怖さはない。だって、私はみんなに話してるんじゃない。

頬杖していた手を解いて椅子を引いた瞬間から、視線はずっと三浦だけを捉えていた。

「三浦って、神社の階段上がるだけで息切れするほど体力ないもんね」

「……市川」

「私より先に走ってても楽に追い越せたし、みんなが知らないだけで足もすごい遅いよね」

クラスメイトたちが顔を見合わせている。次に聞こえてきたのは……。

「マジか! 俺、薄々旭は運動音痴なんじゃないかって思ってたんだよ」

「旭でも欠点あるんだね! なんか可愛い」

先ほどの期待はどこに行ってしまったのか。みんなは彼の新しい一面のほうに関心があるようで、すっかりリレーの話は流れていた。