きみは綺麗なものを見つけるのが得意だった。

私が首を傾げてしまうものでも、きみがシャッターを切れば不思議と美しいものに見えた。

それが魔法のように思っていたことを伝えられないまま、私は今日も生きている。


換気扇が回っている台所。私はスマホでレシピを調べながらおかずを三品作っていた。それらをお弁当箱に詰めたところで、お母さんが起きてきた。

「あれ、響? どうしたの?」

「いつもより早く起きたからお弁当作ってみた。お母さんと未央のぶんもあるよ」

「え、私のも?」

「うん。味に自信はないけど、お昼ご飯に食べてね」

「助かるわ。ありがとうね」

その言葉に、私は微笑み返す。後片付けのためにお母さんに背を向けると、笑顔はゆっくりと消えていた。

――『響が友達と遊びたい気持ちはわかるけど、今だけは色々と手伝ってほしいのよ』

私もそうしてあげたい。忙しいわけではないし、時間だってもて余すほどある。でも、お母さんが続けて言った『明日からはお願いね』という言葉が、まるで呪いみたいに絡み付いている。

私が手伝わなければお母さんの負担が増えてしまう。そしたら家の中もギスギスする。

私が頑張ればいい。私が頑張れば済むことなんだと、暗示のように言い聞かせていた。