「ああ、ごめん。なんか電波悪くて」
とっさに嘘をついてしまった。
『そっか。旭はまだ写真続けてるの?』
「いや、こっちに写真部はないし、東京と比べて風景も代わり映えしないから、スマホでもあんまり撮らないよ」
俺が見返しているのは、十四歳の頃に撮った写真ばかり。
過去が恋しいわけじゃない。
今だって毎日楽しいし、笑ってる。
だけど、ふと、自分の心は空っぽなんじゃないかと思う時がある。
『星が綺麗なら撮ってよ』
そう言われて顔を上げた。ずっと空にあったはずの満天の星たち。こんなにも光輝いていたことに今気づいた。
「じゃあ、響に送る。アドレス変わってない?」
『うん』
「電話切ったらすぐ送るから。一番綺麗な星を撮るよ」
きっと俺は周りが思うほど、明るいやつじゃない。
心に傷痕があるのに誰にも言えなくて。言えないまま〝人生〟が終わっていくかもしれないのに、それさえも受け入れてる。
だから、響に叱ってもらいたい時があるよ。
隙を見せないといつか自分が壊れるよって、あの時みたいに。