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「旭くん、いらっしゃい!」
約束の時間に早坂の家に行くと、エプロン姿の朋美おばさんが出迎えてくれた。
「なんかまた背が伸びてない? 今なんセンチ?」
「百七十六くらいっすかね」
「見るたびに男前になっていくから、おばさんドキドキしちゃうわー」
おそらく早坂の明るさは、母親からの遺伝だろう。早坂の親父さんは寄合で今日は外で食べてくるそうだ。
寄合なんて言葉を使っているけれど、要するにのんべえたちが集まる飲み会。今頃どこかの家でどんちゃん騒ぎをしてる頃だと思う。
「旭くん、味は大丈夫だった?」
「はい、めちゃくちゃ美味しいです」
おばさんは焼き魚をメインとした和食を作ってくれた。早坂はパスタが食べたかったとワガママを言っていたけれど、俺は和食のほうが好きだからご飯までおかわりしてしまった。
「よかったわ! 環は少食だから本当に作りがいがないのよ。旭くんさえよければまた食べにきてね」
「ありがとうございます」
食事を終えたあと、早坂がどうしてもと言うから二階へと上がった。