「べつに暗くてもいいよ」

「え?」

「無理に明るくされると逆に気になる。少ししんみりした顔を見せてくれたほうが人間っぽくて安心できるよ」

……人間っぽい?

「あ、ひょっとして今まで人間っぽく見えてなかったから俺のこと怖いって言ったのか?」

「うん。なんかいい人っていう設定をプログラムされた機械みたいだなって思ってた」

「ひでえ」

「隙を見せないといつか自分が壊れちゃうよ」

「じゃあ、壊れたら直して」

「調子に乗らないで」

叱られたのに、なんか嬉しい。

おそらく市川は基本的に人を信用していない。だからこそ相手が信用できる人なのかどうかをちゃんと見ようとしてる。

そういう感覚が鋭くて、しっかりと判断しようとする姿勢が魅力的だと思う。

もっと、市川響に許されたい。

もう少し近くにいられる許可がほしい。

頭上に広がっている桜のように、俺の気持ちも確実に大きくなっていた。