「可哀想……まだ小さいのに」
早坂はすかさず荷台から下りる。
「触るなよ。あとで俺が役場に電話しとくから」
「うん……」
早坂は近くに咲いていた花を摘んできて、子猫の側に置いていた。すぐに手を合わせて「まっすぐ天国に行ってね」と声をかけている。
彼女は普段とげとげした物言いをすることが多いけれど、しっかりと温かい心を持っている。
母さんが東京にいた時よりも元気なのは早坂がいるからだと思ってるし、俺もずいぶんとその明るさに助けられていた。
「ねえ、今日おばさんいないなら、うちでご飯食べなよ」
「さっきもんじゃ食ったじゃん」
「あれはおやつでしょ。育ち盛りがなに言ってんのよ」
そういう自分は体型に気を使ってか人に食わせておいて、ほとんど食ってなかったくせに。
「まあ、気が向いたらな」
「七時ね! 絶対来てよ!」
「はいはい」
早坂と別れたあと、着替えるために一旦家に帰った。約束の時間まで一時間以上あるので、ひとまずベッドへと寝転ぶ。
こうして暇ができると、俺はいつもスマホに残されている写真フォルダを開いてしまう。
……そういえば、さっきの茶トラと同じような猫を響も可愛がっていた。
その時の写真があったはずと、指を過去にスクロールさせた。