「あのさ、ああいう場合は軽く流せばいいのよ」
駄菓子屋からの帰り道。また自転車の後ろに乗せてほしいと言うので、俺はまた早坂と二人乗りをしていた。
「流せなかったんだよ」
「連絡とってる子って、どういうタイプ?」
「一見冷たく見えるけど、優しくていい子だよ」
「抽象的すぎて想像できない」
「想像しなくていい」
彼女が今どんな生活をしているのか詳しく聞いていない。でも電話では楽しくやっていると言っていた。
本当は大丈夫かなって少し心配してたから、あの頃みたいにひとりでいるわけじゃないんだなって安心した。
「そういえばお前の動画って、マキちゃんねるって言うの?」
「そうだよ。たまきちゃんねるだとゴロ悪いでしょ。だからマキちゃんねる」
早坂はポケットWi-Fiを持ち歩いているほど、つねにSNSをチェックしている。俺はネットに疎いからよくわかんないなと思いながら、自転車を走らせていると、田んぼの脇を流れる用水路で子猫が倒れていた。
おそらく母猫とはぐれて、探している内に落ちてしまったのだろう。残念ながら体はピクリとも動かずにもう死んでいるようだった。