学校は自転車で十五分の場所にある。自由、心学、友情を校訓としていて、この町に住んでいる大人たちも卒業生という元治元年からある高校だ。

そんな歴史ある高校も、現在の全校生徒数は百人にも満たない。

うちの学年はふたクラスあり、クラスメイトも十六人いるけれど、今年の一年はひとクラスしかいない。

いつか山の向こうにある高校に吸収されると聞いたけれど、詳しくは知らない。

終始仏頂面だった早坂も教室に入ってしまえば、クラスメイトと楽しそうに喋っていた。

この町の人間関係は強くて狭い。

みんな保育園、小学校、中学校と子供の頃からの繋がりばかりで、友達というより兄弟に近い。

「ほら、席につけー」

そして、担任もまた地元民である。

どこを見渡しても一緒に育ってきた人たちしかいない光景はこの町特有のもので、そこに放り込まれた俺は慣れるまで少し時間がかかった。