「未央は寝たの……?」
「たった今ね。最近は外で遊ばせてあげられてないからストレスが溜まってるみたいで寝つきも悪いのよ」
お母さんの顔が見るからに疲れている。仕事が大変なのはわかるし、さらに家事育児をしていくのは体力も精神も相当きついことだと思う。
でも、同時に考える。
それは最初からわかっていたことじゃないのって。
単身赴任でお父さんが家にいないことも。まだ未央の手がかかるのに仕事復帰したことも、しっかり考えれば大変になることは簡単に想像がつく。
「響が友達と遊びたい気持ちはわかるけど、今だけは色々と手伝ってほしいのよ」
今だけなんて、それは違う。お母さんは初めから私が手伝いをすることを前提に物事を考えている。
「来年には未央を保育園に入れる予定だし、本当に今だけだから、明日からはお願いね」
お母さんは気づいているんだろうか。さっきから私の心配を一度もしてくれてないってこと。
連絡もしないで九時に帰ってきたんだよ?
責めるよりも、なにかあったんじゃないかって思ったりはしない?
きっとお母さんの頭の中に、私はいない。
いるのは、未央の面倒を見てくれる〝お姉ちゃん〟だけ。