「ねえ、今日もキジバトはいた?」

『いたよ。学校帰りにめちゃくちゃ鳴いてた』

「そっか」

私は昨日の電話のあと、キジバトの鳴き声を動画で検索した。見た目は普通のハトと変わらなかったけれど、鳴き声はやっぱり独特だった。

もしかしたら東京にもいるかもしれないけれど、あんなにゆったりとした鳴き声じゃ、この雑踏の中では耳に入ってこないだろう。

「……岐阜のどの辺なの?」

キジバトの鳴き声がよく通るくらい静かで、こんな夜景は見えなくても星がよく見える素敵なところに旭は住んでいるのだろうと思う。

『山奥だよ。東京からだと新幹線に二時間半乗って、んでそこからバス。山の山のまた山の向こう側だからバスも一本じゃたどり着かない場所』

想像しただけで、思考がぐるぐると回った。

山に囲まれて自然豊かな情景は頭に浮かんでも、自分がその町に行くことは考えられない。


『旭ー』

と、次の瞬間。電話の向こう側で女の子の声がした。