きっとこの夜景を作り出している明かりの数だけそこに人がいて。ひとりきりになることが難しいほどみんなが寄せ集まって生活しているというのに……私は誰とも心を分かち合えていないことを強く感じる。

家でも学校でも、自分の居場所はない気がしていて。そんなこと私が勝手に思っているだけだというのに、その気持ちから抜け出せない。

急に苦しくなってきて柵を握りしめていると、ポケットの中にあるスマホが振動していた。それは旭からの番号だった。

「はい」

平静を装いながら、スマホを耳に当てる。

『響?』

もう三回目の電話だというのに、その声は決まって疑問形だ。

「うん、響だよ」

『今、なにしてた?』

「風に吹かれてる」

『なにそれ、カッコいいな』

彼がクスリとした。高いお金を払ってまで見る価値がある夜景なのかはわからない。けれど旭と一緒に来ていたら……私はもう少し違う感想をもったと思う。