「なあ、星は見える?」
『……星?』
そのうちにキキキィという窓の開閉音が聞こえてきた。
「北斗七星が見えない?」
『わかんない。どれ?』
「ピカピカ光ってるやつ」
『飛行機が飛んでる光しか見えない』
「ああ、たしかにそっちは星よりも飛行機の明かりのほうがよく見えるよな」
この町で星じゃない光が移動していたら、絶対にUFOだって大騒ぎになりそうだ。
「……同じ世界に住んでるのに、本当に全然違うよな」
空気も匂いも見るものすべてが違う。
俺が離れたあの街に響は今もいる。二年前まで自分もそこにいたはずなのに、まるで大昔のことのように思えてしまう。
『岐阜に引っ越してからなにか変わった?』
「まあ、変わったことはあるよ。変わってないこともあるけど。響は?」
『私も、そんな感じ』
会話のテンポはあの頃のままだなって思うのに、時折感じるぎこちなさが、空白の二年間を物語っている。