響と繋がる番号を見つめて、どれくらい時間が経っただろうか。いつの間にか夜になっていた。

本当は新生活が落ち着いたら、すぐにでも連絡するつもりでいた。

なにを話そうか色んなことをシミュレーションして。一面田んぼだらけの風景とか、地面に張り付いてる片方だけの手袋とか、無人野菜売り場とか、絶対に東京じゃ見ないものをたくさん撮って送ろうと思っていた。

でも結局、一枚も送れていない。


『なんで……かけてきたの?』

彼女の声は電話越しでもわかるほど戸惑っていた。

なんの音沙汰もなしにいきなり二年振りに連絡したんだから当然だと思う。

とっくに俺のことなんて忘れていたかもしれないのに、自分の都合だけで電話をかけてしまった。と、その時、手の中にあるスマホが鈍い音を出して揺れていた。

【近くにいる】

それは早坂からのメッセージだった。またか、と呆れながらも、俺はすぐに外へと出向く。

「危ないからこの時間にうろつくなって言ってんじゃん」

早坂は虫がバチバチと群がっている外灯の下にいた。