「お疲れさま。検査どうだった?」
彼は東京で肺の手術を受けた。たくさん調べて、紹介状も書いてもらい、腕のいい医師がいるという大きな病院に今も定期検診で訪れている。
「なんの問題もないって」
「本当に? よかった!」
彼の手術は成功した。呼吸器の確保が難しいと言われていた七十パーセントに打ち勝ち、今もこうして私の隣にいてくれている。
「腹へったからあの喫茶店で飯食って、それからまた写真を撮りにいこうよ」
旭の首にかけられているストラップには、一台のフィルムカメラが下げられている。彼のお父さんのものだ。
「うん。いいよ。あ、でもその前に私も自分のカメラが欲しいと思ってて、できれば一緒に選んでほしい――」
「響」
「うん?」
無防備に振り返ると、突然シャッターが切られた。旭のカメラが私に向いている。
「俺の一番、綺麗なもの」
彼がニカッと笑った。
これからもきみとの時間を大切にしていこう。
私は旭へと駆け寄った。
幸せの足音を大きく響かせながら。
《END》