私はひとりで東京の街を歩く。

見渡す限りビルばかりで、すれ違う人たちはつねに時間に追われている。

私もこの一年間、あっという間だった。家族や友達に支えられながら、ひたすら前に進んでいた気がする。

彼は、あのあと懸命に病気と向き合った。

成功率が三十パーセントしかない手術を受けて、無限に広がる未来に賭けた。

私はやっぱり、その選択をした旭に感謝しかないし、彼の勇気は今も私の背中を押してくれている。


ねえ、旭。

世界には七十七億の人がいて、この東京には千四百万人が存在している。

関わりがない、名前も知らない人が多い中で、もしも私たち出逢っていなかったらどうなっていたのかな。

どんなことがあっても、たとえ交わらない遠い場所にいたとしても、私と旭は出逢う運命だったと信じたい。

だって、ほら、きみは……。


「響、こっち!」

こんなに人がいても簡単に私を見つけてしまうでしょ?

でもね、本当は私のほうが早く見つけてたよ。