私はきみのことを名前どおりの人だと思っていた。

きみがいると世界が明るくなって、きみがいないと何かが欠けたみたいに心が沈んでいく。

そんなあなたは、私の光だった。

だけど、太陽が昇らない日があっていいよ。

沈んだままの日もあっていい。

光になんてならなくていい。

ずっと輝いていなくてもいい。

今度は私がきみの光になるから。

ーーなりたいから。


「俺、手術受けるよ」

私の胸の中にいた旭が顔を上げた。

なんて強い瞳をしてるんだろう。そこには絶望なんて一ミリもなくて、あったのは未来への希望だった。

「死ぬのを待つより生きることに賭けたいんだ」

ここに辿りつくまで、数えきれないほどの葛藤があったはずだ。でも今の旭に迷いは感じられない。

細くて険しい道でも、立ち止まるんじゃなくて、進むことを選んでくれたこと。

そんな彼を誇りに思う。

「ありがとう、ありがとう、旭」

次に私の体を引き寄せてくれたのは彼のほうだ。

「もし三途の川を渡りそうになったら、連れ戻して」

「うん、必ず」

「俺、響とやりたいことがいっぱいあるからあと十年は生きなきゃ」

「やだ、百年」

「はは、じゃあ、百年」

終わらない。終われない。終わらせない。

「響、十四歳の時も今もずっと好きだ」

「私も、ずっと旭のことが好きだよ」

私たちはまた今日から、始まっていくんだ。