開いてる店がないからと、そのまま畦道の端へと座る。旭と肩を並べていることだけで、胸が熱くなっていた。
「綺麗になった」
彼が照れながら言う。こういうストレートなところ、全然変わってない。
「旭もカッコよくなった。なんか男らしくなってる」
「響も女の子らしくなってる」
「想像と違った?」
「うん」
「ガッカリしてない?」
「するわけない。想像以上で緊張してるよ」
空白の時間が嘘だったかのように、会話が弾む。電話やメールのやり取りをしていたからじゃない。きっとずっと十四歳の時から心は強く繋がっていた。
「私、旭に謝らなきゃいけないことがある」
「なに?」
「二年ぶりに連絡をもらってから、旭にたくさんの嘘をついてた。本当は家族も友達もなにひとつ上手くいってなかったのに、上手くやっているふりをしてた」
それと旭が引っ越してから写真部に行かなかったことも話した。部室はおろか近寄ることもできなくて、彼が残してくれたフィルムに気づけなかったことも。
「大丈夫。俺だって嘘つきだよ」
旭の優しい声が飛んでくる。