私は予定時間より大幅に遅れて目的の駅に着いた。とりあえず事前に教えてもらっていたバスに乗ろうとするが、すでに最終が行ってしまったあとだった。

……ど、どうしよう。右も左もわからない場所で立ち尽くしていると、駅のロータリーで車のクラクションが鳴った。

「響、こっちよ!」

えっ、と辺りを見渡す。私に向かって大きく手を振ってる人がいる。ゆっくりと近づいてみると、それは早坂さんだった。

「な、なんで?」

「新幹線が遅れたんでしょ? きっともう私たちの町に向かうバスはないだろうと思って迎えに来たのよ」

「どうして遅れてるって知ってるの?」

「スマホで調べればすぐわかるのよ。ほら、ここからも時間かかるんだからさっさと乗って」

私は早坂さんに後部座席へと押し込まれた。早坂さんは助手席へと乗り、その隣の運転席には男の人がいた。

「初めまして。稲田です」

「え、は、初めまして。市川です」

早坂さんのお兄さん? いや、でも名字が違う。聞いていいのかどうなのかわからないけれど、どうしても気になったので言葉にした。