東京を離れる日。朝から運送業の人たちが家の中の家具をトラックに運んでいた。最後の荷物が積み終わると、一足先にトラックは出発する。

俺と母さんも家の中を見渡し最終チェックをしたあとに手荷物を抱えてバス停へと向かった。

ここから東京駅へと向かい、新幹線に乗る予定になっている。バス停が混んでいると思えば、クラスメイトたちが見送りに来てくれていた。

「……旭、寂しいよ」

「俺たちのこと忘れんなよ!」

「うん、みんな本当にありがとう」

俺のために涙ぐんでいる人たちがいて、もらい泣きしそうになる。

学校は俺にとって青春の場所だった。

友達がいたから楽しい思い出が作れた。ずっと元気でバカをやっていてほしいと願う大切な人たちだ。

みんなから寄せ書きと手紙を受け取ってバスに乗り込む。

「旭、元気でな!!」

窓越しで呼ばれる名前に応えるようにして、大きく手を振った。バスのドアが閉まるのと同時にゆっくりと車体は発進していく。

みんなの姿が見えなくなると、俺は後方に向けていた体を戻した。

「旭、ごめんね。私のわがままで」

隣の席に座ってる母さんが申し訳なさそうな顔をしている。