~旭side~
あんなに一緒にいて、たくさん話をして、誰よりも近い存在だったけど、きっとお互いに心は見せ合っていなかった。
今さらこんなことを言っても遅いけど、あの瞬間に戻れるわけじゃないけど。
本当は俺たちあの時、笑って別れないで泣いて別れたらよかったんじゃねーのかな。
そしたら、響の心に触れられた。
それで俺の心にも触れてもらえた気がするんだよ。
退院して俺はいつもの日常に戻っていた。
倒れたのが夏休み中だったので、早坂以外の友達にはバレずに済んだけれど、やっぱり体調があまり良くなくて、喘息を理由に保健室で休むことも増えていた。
「無理して登校しなくてもいいんだぞ」
先生が心配して様子を見にきてくれた。
「無理はしてない。家でひとりでいるほうが多分しんどくなるし」
友達のうるさい声を聞いていたほうが安心できる。すると先生はベッドの横にある丸椅子に腰かけた。もうすぐ授業が始まるというのに、保健室から出ていく気配がない。
「教師が授業ふけていいの?」
「次はどこのクラスも体育がないんだよ。そんなに俺ってまだ不真面目に見える?」
「うん。すげえグレてたって早坂が言ってたし」
「あの頃は漆黒の走り屋って呼ばれてた」
「だせえ……!」
思わず吹き出すと、頭を軽く殴られた。
きっと先生は俺の体のことを気遣って元気付けてくれている。今までとくに無理をしてたわけでもなくて、教室にいれば病気だということを忘れるくらい明るくいられた。
でも、最近はずっと右肺が圧迫されているような感覚で、苦しさを隠せないようになってきた。