――『ふたりとも甘酸っぱい初恋を美化してるだけで、本気で想い合ってるわけじゃないって、そう思ってるんだけど違う?』
ふと、あの子の声が頭で聞こえた。
違う、違うよ。
だってただの思い出の中の人ならこんなに苦しくならない。
大切だから、知りたいと思う。
大切すぎて、知られたくないとも思う。
私だって、今の本当の自分を見せたくなかった。
きみにはダメな部分を知られたくなかった。
でも、違う。
大切だから、見せなきゃいけなかった。
私、ずっと間違ってたよ。
「……っ……うう……」
涙があふれた。
しゃくり上がっている声は彼に聞こえているだろう。
頑なに彼の前では泣かないって思っていたけど、そんなのどうでもいい。
泣きたいから泣く。
恋しいから泣く。
旭に触れたいから泣く。
これが、嘘偽りのない今の私の感情だ。