その日の夜。時間どおりに彼から電話がかかってきた。私はベッドに腰かけながらスマホを耳に当てる。
『もしもし、響?』
私がなにかを発する前に声が飛んでくるのはいつものこと。それで私と繋がってるに決まってるのに、確認するように名前を呼んでくる。
「うん、そうだよ」
『約束してたのに、クラス会行けなくて本当にごめんな』
「ううん。平気」
『でさ、その理由なんだけど……』
私はゴクリと唾を飲み込む。もう少し他愛ないことを話してからだと思っていたけれど、真っ先に言葉にしようとする姿勢に、彼の決意が窺える。
『俺、あの日倒れて病院に運ばれたんだ』
「え……?」
衝撃的な事実に私は固まる。なにかあったんだろうと大方予想はしていたけれど、まさか倒れていたなんて……。
「た、倒れたってなんで? 事故とか?」
『ううん、違う。俺の呼吸器が弱いのは知ってるだろ?』
「うん」
『喘息の延長ってわけじゃないんだけど、今肺に大きな病気をもってる』
言葉を……失った。
一気に血の気が引いていって、自分の体温が冷たくなっていくのがわかる。