部室のドアを開けると、やっぱり目映いほどの夕焼けに包まれた。
この暖かな部屋で私と旭はふたりだけの時間をたくさん過ごした。あの日々はずっと胸の中で輝き続けている。
思い出に浸りながら、ふと目に入ったのは、部室と隣接してるもうひとつの部屋。
『暗室に……なにか置いてなかった?』
そういえば前に彼からそんなことを聞かれた気がする。
旭が引っ越してから写真部に籍だけを置いてまったく活動していなかったので、もちろん暗室にも入ることはなかった。
私は久しぶりに暗室のドアノブを回す。
写真の焼き方を教える人がいなくなってしまったせいか、人の出入りがないとわかるほど埃っぽかった。
手探りで蛍光灯のスイッチを入れる。机には真っ白な印画紙に現像液。写真を焼くための機械もあの頃のまま配置すら変わっていなかった。
……もったいないな。せっかく入部してくれた子がいるのだから、せめてやり方くらい伝えてあげられたらいいけど……と思っていると、棚の上に一本のフィルムが置いてあることに気づく。
35mmということは、きっと旭が先生のカメラを借りて撮っていたものと同じだ。
なんでこんなところにあるんだろうと手に取ると、なにかが舞うように床に落ちた。
足元にあるメモ用紙には【響へ】と書かれてある。