文化祭当日。俺たちは確保した教室で最終確認を行っていた。

「ねえ、やっぱりこれ歪んでない?」

他の人たちを真似て作った呼び込み用の立て看板。【写真部主催の展覧会はこちら!】と響に大きく書いてもらったけれど、なにやら字が気に食わないようだ。


「大丈夫だよ。響の字って可愛いし」

「可愛いじゃなくて綺麗に書きたかった」

ムスッとしてる顔が新鮮だなと思いつつ、気づけば一般公開の九時半になろうとしていた。

「……お客さん、来てくれるかな」

教室の壁に沿うように設置したペグボードには、俺たちが今まで撮った写真が飾られている。

それはスマホとフィルムカメラで撮ったものを厳選して、互いに二十枚ずつ用意した写真だ。

俺はどちらかというと風景が多いけれど響は違う。

アスファルトの上で逞しく咲いている花。秋風に揺れている真っ白なカーテン。川辺を泳ぐ親子のカルガモに、道端に落ちている片方だけの靴。さらには、コンクリートに映る俺の影といった他の人では撮らないものを彼女は残している。

響は自由という言葉がよく似合う。

誰も気づかないことに目を向けて、誰もが通りすぎるところで足を止める。

……けれど。

誰でも気づくことに目を向けて、みんなが立ち止まったところで自分も足を止めなければいけないような。

そんな自由ではないことを強いられる時が訪れるかもしれない。

俺たちは、ずっと十四歳ではいられない。

幼さを理由にできない日が、もうすぐそこまで来ている。