「私、響に会ったよ」

「は……え?」

「言ってなかったけどあの日、私も東京でモデルのオーディションがあったのよ。当日になって旭を困らせてやろうって同じ新幹線のチケットを取ってたんだよね」

クラス会があることは、早坂に伝えていた。俺から言ったというより、いつものようにうちに来てハガキを見られてしまったと言ったほうがいい。

それで『もしかして響に会うの?』『いつ行くの?』『待ち合わせとかしてるの?』『何時?どこで?』と激しく問い詰められた末に、俺はすべてのことを白状していた。

「え、会ったって……。お前、わざわざ俺が教えた待ち合わせ場所に行ったのかよ?」

「うん。でも怒らないでよ。旭は急用で来れないって伝えてあげたんだから」

そうだ。響は俺のことを待っていたはずだ。

スマホには俺が返信できていないメールが届いている。きっと初対面の早坂が現れて動揺したはずだし混乱もさせてしまっただろう。早く連絡しないと……。

「ねえ、響は旭の病気のこと知らないんでしょ」

スマホを打つ指を早坂に止められた。

「病気どころか今の旭のこともなんにも知らないって感じだった。なんであの子のことが好きなの? 初恋だから大切にしてるの?」

「………」

「私だって旭が初恋だよ。この二年間旭の隣にいたのは私なのに、なんで私はあの子以上になれないの?」

訴えるような彼女の瞳を逸らせない。

見て見ないふりをしてただけで、早坂の気持ちには気づいていた。

俺だって聞きたい。

なんで俺は響じゃなきゃダメなんだろうか。