「な、なんで?」

「けっこう前に旭の部屋にあった薬を見つけてさ。もう死んじゃったうちのばあちゃんも肺の病気になって、旭と同じの飲んでたんだよね」

「………」

「それで、さすがに旭には聞けないからおばさんに聞いた。手術のことについても教えてもらってたよ」

……そんなの初耳だった。だから母さんはことあるごとに早坂をうちに呼んだりしてたのかな。俺の病気のことを知ってる人が近くにいればなにかあった時に安心だからと。

「じゃあ、もっと早く知ってること教えてくれたら……」

そう言いかけると、ふわりと視界に長い髪が横切った。気づくと早坂に抱きしめられていて、花よりも甘い香りに包まれている。

「よかった。旭が無事で……っ」

顔は見えないけど、泣いているんだってわかった。

早坂はきっと俺が目を覚ます間、ずっと心配してくれていたはずだ。でもあまり大袈裟にすると俺が気にするからと、平静を装ってくれていたんだろう。

「ありがとう。早く俺のこと見つけてくれて」

ここに運ばれてきたってことは、おそらく俺はまた呼吸が苦しくなって意識を失ったに違いない。

あの日は暑かったし、玄関先に屋根もないから、長時間倒れたままだったら、今頃どうなっていたかわからない。

早坂は涙を拭いて俺の顔をじっと見てきた。