たしかに住所は言い訳だ。スマホが壊れたから連絡が取れなかったのも理由にはならない。
私がこの二年間、彼に会いにいかなかったのは、今の自分が心底嫌いだったから。
そんな自分は見せられないと。旭の瞳に映っていた十四歳の私が本当の自分だったらいいのにって思っていたからだ。
「岐阜と東京なんて新幹線に乗れば二時間半よ。小さい子じゃないんだから、普通に行く気があれば簡単に行き来できるでしょ」
「………」
「それなのに旭もあんたもその距離を越えなかった。だから私、そのくらいの気持ちなんでしょって思ってる。ふたりとも甘酸っぱい初恋を美化してるだけで、本気で想い合ってるわけじゃないって、そう思ってるんだけど違う?」
悔しいのに、違うと言えない。
大切だから会えなかった。
知られたくなかった。
できれば会わないままで……なんて思ってた。
でも今日旭が来なくて悲しかった。
本当はずっと怖くても会いたかったんだって、今わかった。
「べつに私はあんたをいじめに来たんじゃないのよ。たまたまオーディション日が重なったからついでに顔を確認しに来ただけ」
……オーディション?
なにか面接でもあるんだろうかと思っていると、中学生らしき二人組の女の子が早坂さんに近づいてきた。