「……今日、旭は?」
辺りをいくら見渡しても、彼らしき人はどこにもいない。
「急な用事ができて来れなくなったよ」
「……え?」
「だから私が代わりに来たの」
きゅ、急な用事って……。
彼とは朝起きてすぐに連絡を取った。時間と待ち合わせ場所をお互いに確認して、緊張するけど私に会うのが楽しみだって、言ってくれていたのに……。
「旭が……ここに来るようにあなたに頼んだの?」
「それは内緒」
胸に棘が刺さったみたいに痛い。
私は約束してから今日までずっとなにをしていても旭のことばかりを考えていた。
今着てる洋服だって彼に可愛いと思われたくて選んだ。
それなのに、他の女の子が来て、旭は来ない。
「ガッカリって顔してるね」
早坂さんに心を読まれてしまった。
「ねえ、あんたって旭のことどう思ってるの?」
「どうって……」
なんでこんなこと聞かれなくちゃいけないんだろう。気まずいを通り越して少しムッとした。
彼女がどんな子なのか知らないけれど、口調も態度も上から目線だし、なにより私のことを敵視してるように感じてならない。
「あんたのことは色々と聞いてるよ。なんでこの二年間、旭に会いに来なかったの?」
「……住所とか教えてもらってなかったし」
「そんなの誰かに聞いたりすればわかることじゃない」
私はグッと手に力を入れた。