私はわかりやすくぽかんとする。どうやら人違いではないようで、彼女は腕を組みながら声をかけてきた。

「ねえ、あんたが響でしょ?」

初対面なのに呼び捨てにされていることに驚く。私は一気に警戒心を強くさせた。

「だ、誰、ですか……?」

「私、早坂環って名前。三浦旭と同じ町に住んでる同級生」

「……旭と同じ町に?」

早坂環と名乗る女の子は、とてもスタイルがよくてオシャレだった。一般人ではないようなオーラを放ち、顔も小さくて可愛い。けれど、なぜかこの顔立ちに見覚えがある気がした。たしかどこかで……。

「ふーん。写真よりも実物のほうがよく見えるのね」

「しゃ、写真……?」

「中二の時のあんたを旭に見せてもらったことがあるから」

おそらくだけど、この子は前に彼の部屋に入ってきた女の子だ。電話越しで聞こえた声と一致している。

「まあ、でも今日あんたのことが一目でわかったのはこれのおかげだけどね」

そう言って早坂さんが見せてきたスマホの画面には私が写っていた。それは以前、男子も交えてカラオケに行った時に、みんなで撮ったものだった。

「なんでそれを……」

「私の動画を見てくれてる子がこの中にいてさ、いつもメッセージくれるからSNSもチェックしてんの。まさか響が写ってるとは思わなかったけど」

「あ、旭にその写真は……」

「見せてないよ。わざわざ見せる理由ないし」

その言葉を聞いて胸を撫で下ろす。

べつにやましいことはなにもしていない。でも明らかに遊んでそうな男の子とカラオケに行ったなんて知られたくないし、もしかしたら勘違いさせてしまうこともあるかもしれないから。