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俺は父さんのことを思い出しながら、鬼灯が浮かぶ町を一周して自宅に戻った。
線香の匂いが漂う制服のままベッドへと倒れ込む。確認できていなかったスマホを見ると、響への返信は三日前で止まっていた。しかも、着信まで残されている。
ひとまず明日の午前中にじいちゃんの葬儀があるので、それが終わったら連絡しようと思う。
俺は響の番号を表示したまま、スマホを額に当てた。
ずっと次に死ぬのは自分かもしれないという考えが強くなっている。
『完治するために手術は必要ですが、旭くんの場合、右肺を切除してしまうと、生活に必要な呼吸機能の回復が見込めない可能性があります』
医師から告げられた難題を今まで何度も解こうとしてきた。
でもどうしたらいいのかわからない。
絶望とともにまた呼吸が荒くなる。痛みがある右胸を押さえていると、部屋のドアがノックされた。
「旭」
母さんの声に丸めていた姿勢を正す。
「さっきあまり食事できなかったでしょう。お弁当持って帰ってきたけど食べる?」
「いや……いい」
「顔色が悪く見えるけど大丈夫?」
「うん、平気。他の人たちも解散したの?」
「横田さんととくに親交があった人たちはまだ残ってるわ。夜通しお酒を飲むみたい」
「そっか」
母さんの表情も疲れているように見えた。親切にしてくれていたじいちゃんへの悲しみの他に、やっぱり死というものに触れて父さんのことを思い出したのかもしれない。
もしも俺まで逝ってしまったら母さんはどうなるんだろうか。