最初は事件かもしれないと、色々と調べてもらった。結果として各所に設置されていた防犯カメラには、父さんがひとりで橋に向かった様子しか残されていなかった。

だから、母さんは俺にすかさず言った。

『飲み過ぎて道に迷ったのよ』って。その瞳の奥に真実を隠して。

本当に道に迷って橋に行ったのなら、大切にしていたカメラを俺の引き出しに忍ばせて出掛けるはずがない。

まだ幼かった俺には刺激が強いからと、父さんの死は事故ということになっているけれど本当は違う。

父さんは……自分で死を選んだのだ。

〝もう少し大きくなったら使っていいぞ〟

父さんのカメラを見るたびに、俺はそう言われている気がしていた。

あれから十年。俺は使っても許される年齢になったんだろうか。

誰も教えてはくれない。

答えなんてないのかもしれない。

でも、もしもこのカメラを使って写真を撮るのなら……一番最初は響がいい。