棺の中に入ってしまったじいちゃんは眠っているようだった。あまりに綺麗すぎて、死んでいるとは思えなかったくらいだ。
年寄り扱いするなって。八十を越えても俺たちより元気だって言ってたのに、もう俺はじいちゃんと話すことはできない。
「……俺、少し寄り道してから帰るわ」
「え、じゃあ、私も行くよ」
「お前は明日からまた動画配信するんだろ。その準備でもしとけよ」
「ちょ、ちょっと、旭!」
制止を振りきるようにして、俺は早坂から離れた。
じいちゃんとの思い出を振り返りながら、視線の先に見えたのは精米所だった。
じいちゃんの死を目の当たりにしてから、次は自分かもしれないという考えが頭から消えない。
人の命は簡単に終わる。
それを初めて思い知ったのは、ずっとその背中を追いかけていた父さんだった。