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私は騒がしい夜の繁華街にいた。たまたま友達たちと駅でばったり会い、これから遊びに行くというので合流させてもらったのだ。
【今どこにいるの? 心配だから早く帰っておいで】
スマホが鳴った気がして確認すると、お父さんからメッセージが届いていた。おそらく未央の入院手続きを済ませて家に帰ってきたんだろう。
未央の熱中症は完全に私の責任だ。たとえ言うことを聞かなかったんだとしても、無理やりにでも帽子は被せるべきだった。
頭ではちゃんとわかっている。
重症にならなくてよかったって安心もしてる。
あの時、お母さんも気が動転していた。勢い余って責めてきたことに対して後日謝ってくると思う。だから私も言い返さないで冷静でいるべきだった。
――『お母さんこそ、私のことなんにも見てないくせに!』
あんなこと言うつもりじゃなかった。本心だけど、心に閉まっていようと決めていた言葉だ。
お父さんはそのやり取りを知っているんだろうか。お母さんが話してる可能性は十分にある。
『響はちゃんとやってるよ』なんて慰めてほしいわけじゃないし、『お母さんと仲良くしなさい』なんて宥められたくもないし、『大丈夫。言いたいことはわかるよ』って、寄り添ってほしいわけでもない。
きっと今はなにを言われても心には刺さらない。