「ありがとう。トレー持つよ」
「え、あ、うん」
女の子たちと目が合って、なぜか舐め回すように全身を見られたあと、「なんだ、彼女いるじゃん、行こう」と残念そうに去っていった。
また向かい合わせで席に着いて、声をかけられたことなんてなかったかのように、旭はポテトを食べ始める。
「学校以外でもモテるんだね」
名前すら知らないというのに話しかけてくるなんて、よっぽど旭のことがタイプだったんだろう。
たしかに、彼は整った顔をしてる。甘いルックスをしてるくせに私服はやんちゃっぽいものを着てるから、そのギャップもまた目を惹くポイントだと思う。
「言っとくけど、響も男によく見られたりしてるから」
「そう……なの?」
全然気づかなかった。でも見てることにも色んな種類があるから、私の場合は旭とは違う気がするけど。
「彼女とか作らないの?」
「作るもんなの? 彼女って」
「え、わかんないけど……」
でも、旭の彼女になりたい人はたくさんいるはずだ。
「響は……誰かと付き合うとか考えたことある?」
「ない」
「即答かよ」
「ないよ。だって付き合うって私も好きで相手にも好きになってもらわなきゃできないじゃん」
「どっちが難しいと思う?」
「なにが?」
「自分が好きになるのと、相手に好きになってもらうのと」
「そんなの……後者に決まってる」
人のことを好意的に思うことはそんなに難しくない。私みたいに人間関係が下手くそなタイプは優しくされただけで尚更にそうだ。
でも、相手から好意的に思われることは……すごく難しいことだと思う。