……しっかりしてよって、私、しっかりやってなかった?

預り保育に迎えに行ったり、お風呂に入れたり、絵本を読んで寝かしつけたり、自分なりにお母さんの助けになるのならと頑張ってきた。

なのにこんなひとつのミスで今までのことがなかったみたいな言い方をされて、もっとしっかり面倒を見ろと言ってくる。

こんなのは……もううんざりだ。

「……好きでお姉ちゃんになったんじゃない」

「え?」

「お母さんこそ、私のことなんにも見てないくせに!」

私はバタバタと自分の部屋に駆け込んだ。

心が潰れていく。息もうまく吸えない。誰かにすがらないと壊れてしまいそうで、とっさにスマホを手に取り、旭に電話をかけていた。

……プルルル、プルルル、ガチャ。

「あ、旭……」

『こちらは留守番電話サービスセンターです。発信音のあとにお名前と電話番号を――』

その音声に崩れるようにして、耳からスマホを離した。それからお母さんが部屋を訪ねてくることはなく、代わりに再び出掛けていく音だけがした。