「おい、なにすんだよ!」
「ねえ、写真見せてよ」
「なんの?」
「響の写真!」
なんで勝手に名前で呼んでんだよと呆れつつ、早坂の手からスマホを取り返す。
「写真なんてねーよ」
「あるでしょ。いつもフォルダを見ながらニヤニヤしてんじゃん」
「え、俺、ニヤニヤしてんの?」
……ヤバい、気をつけようと思っている横で、早坂は「しゃ・し・ん!」と催促することを止めない。
たしかにスマホには響の写真がある。ほとんどが不意討ちで撮影したものだ。そのたびに消してと強く怒られたけれど、もったいなくてどれも消していない。
「見てどうすんだよ」
「だって気になるじゃん」
こうなったら早坂は引かない。こういうところがワガママで面倒くさい。
「……たく、わかったよ」
俺は嫌々、彼女の写真を選んで見せた。初めて一緒に出かけた時にオムライスを美味しそうに食べている姿だ。
「ふーん。まあ、普通よりは上って感じだね」
「なに目線だよ」
「旭はこういう顔がいいんだ」
「……べつに顔とかで好きになったんじゃない」
「あ、今好きって言った! やっぱり好きなんじゃん! 響のこと!」
「お前さっきからなんなの?」
早坂の金切り声はよく通るから、鼓膜が刺激されて痛い。そろそろ帰ってほしいな……と思っていると、ノックもなしに再びドアが開いた。
「旭、環ちゃん……」
それは電話の子機を握りしめている母さんだった。