「どうしたの?」

触れ合っている部分が次第に熱を帯びていく。

どっちの脈がドクドクしているのかわからないほど、俺たちは手だけを繋いで固まっていた。なにか言わなきゃ……と、言葉を探す。

「ま、また明日!」

それを聞いた響が目を丸くさせていた。

「それって……明日も会うってこと?」

「あ……」

考えてみれば、今は夏休みだから明日の学校はない。でもとっさに言ってしまった。また明日も会いたいと当然のように思ったからだ。

「明日の予定は……その、どうなってますか?」

「課題でもやろうかなって思ってたけど、べつに急ぎではないです」

「じゃあ、暇ってこと?」

「まあまあ、暇かな」

お互いにぎこちない会話を繰り返す。

「なら、明日も俺に会ってくれる?」

「……うん、いいよ」

響は恥ずかしそうにしながらも、微笑んでくれていた。

この気持ちを自覚したら、もう止められないかもしれない。

彼女はスニーカーを踏み鳴らして駆け出す。華奢な体には大きすぎるリュックと、馬のしっぽのような後ろ髪が遠くに離れていく。

「響、また明日な!!」

約束を確かめるように、声を張った。足がピタリと止まると彼女は少し困ったように振り向いた。

「そんなに言わなくても忘れないよ」

俺だって忘れない。でも響には何度でもまた明日って言いたくなる。

少し前まではなんの接点もなくて、彼女はただのクラスメイトであり部活仲間だった。

けれど、そんなありきたりな関係なら、こんなに胸は熱くならない。

ひぐらしが鳴いている夏の夕暮れ時。俺は響への恋心を強く噛みしめていた。