そのあとは再び街を練り歩き、帰りには移動車で販売していたクレープを半分ずつ食べた。

「なんかあっという間だったな……」

来た道を戻るように線路沿いを進みながら、俺は夕焼けを睨む。響といた時間は本当に速いスピードで過ぎてしまった。

「家の近くまで送っていい?」

「大丈夫だよ。べつに暗いわけじゃないし」

「いや、送る。断られてもそうする」

「なにそれ」

彼女が呆れつつも瞳を細めている。一分でも一秒でも長く一緒にいたいからと言いかけたけれど、さすがにそれは困らせる気がして言えなかった。

「じゃあ、あとで私が撮った写真も送るから」

のろのろと歩いていたというのに、分かれ道に着いてしまった。ここまで来たらさすがに引き止めることはできない。

「うん。俺も送るよ」

きっと俺は今、名残惜しいという気持ちが顔に出ていると思う。

「じゃあね」と、彼女だけが歩き出す。電線に止まっている二匹の鳥も『また明日』と言ってるように、別々の方向へと飛んでいた。

「あ、待って!」

思わず追いかけて彼女の手を掴んだ。響の手は柔らかくて小さい。強くしたいけれど壊れてしまいそうだと、力を緩めた。