「こちらへどうぞ」
この店のマスターと呼ばれる髭の生えたおじさんに席まで案内された。高かったらどうしようと今さら不安になったけれど、メニューを見ると値段はリーズナブルで、俺たちでも食べられる軽食がたくさん書かれていた。
「こういう落ち着いたところ慣れてるの?」
「お、おう! 喫茶店とかわりと行くほうかな。週に二日くらい?」
「ふっ、嘘ばっかり」
「だったら聞くなよ」
「ごめん、ごめん」
普段すましている顔が多いぶん、こうして無邪気に笑ってくれると破壊力がヤバい。
「私もこういうところ初めてだから緊張してるよ」
だから隠さずに一緒に緊張してと言っているようだった。
最初から可愛いことはわかっていた。けれど、響のことを知れば知るほどその魅力に気づかされる。
俺たちはオムライスを注文した。そのスプーンのデザインが四つ葉のクローバーになっていて、気づけば同時に写真を撮っていた。