もしも、人生の最後を選べるのなら、私はきみがいた二年前がいい。

なにをするにも一緒で、なんにも気を使わなくて、私が私らしくいられた唯一の日々だ。

ねえ、きみはもしも、人生の最後を選べるなら、いつがいい?


学校の帰り道。市川(いちかわ)(ひびき)こと私は夕焼けが色濃い歩道橋の上で足を止めた。

(せわ)しなく行き交う車やバイクの音。ツンとする排気ガスの匂いにむせそうになりながら、ピンク色のなにかが空中で舞っていた。偶然にも手のひらに乗ったのは、桜の花びらだった。

ああ、今年も咲いてたんだ。

毎日ここを通っているはずなのに、視界に入らないわけがないというのに、今の今まで満開の桜に気づかなかった。

……ピロン。
制服のポケットに入れていたスマホが鳴ったかと思えば、いつも一緒にいる友達でやっているメッセージグループが絶え間なく動いている。

内容は彼氏がどうとか、テストがどうとか、美味しいものを食べた報告とか、最近買ったものの写真とか、これといった話題がなくても次々とメッセージが送られてくる。

私は内容もろくに読まずに目に入ったスタンプを押した。それは桜が地面に落ちていくよりも早く画面から流れていった。